311以降のアーサー・ビナードの創作活動はかなりアグレッシブである

朝日新聞でアーサー・ビナードが宮沢賢治の「雨にも負けず」を翻訳し、日本が世界に誇るアニメーション監督・山村浩二が絵を描いた絵本が出されたことを知った。興味があったので早速買って読んでみて、いろいろ考えさせられた。私はアーサー・ビナードの著作が好きだし、一貫して反原発、反宇宙開発を貫いている彼の姿勢には非常に興味がある。しかしこの著作はあまりにもアーサー・ビナードの思想と個性が強く出すぎていたこと、英語として読んであまりにも言葉が強くて少し戸惑ったのだ。

雨ニモマケズ Rain Won't
今人舎
宮沢賢治

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ただ「雨ニモ負ケズ」という詩が宮沢賢治の人生の辞世の句だったことを考えると、ある意味切羽つまったような性急感は詩にこめられているよなと思い、そういうビジョンを思い起こさせるきっかけとなったという点ではこの絵本は非常に興味深い。

また山村浩二さんの絵は宮沢賢治の世界がすごく反映されていた。というよりも宮沢賢治が描いていた動物や昆虫などがごく自然に共存するファンタジーは、彼の生きていた時代には現実に存在していたかのようにリアルに描かれている。そして宮沢賢治が生きていた時代と私たちが生きている時代の大きな隔たりというものを見せるという意味でも野心的な試みだと思う。山村さんの一つ一つの絵のタッチには動物や植物の生命の息吹が伝わってくる。アーサー・ビナード自身がミシガン州の田舎で育ち、昆虫などと親しんだ少年時代を送ったことを考えると、これを絵本にして伝えたかった彼の意志がより強く感じられた。

山村さんの絵の中でも特にラストは圧巻で、賢治らしき人が立っているらしいのだが、実際にはタンポポなどの雑草の生えた地面に黒い人影が写っている描写である。賢治がなりたいと思っていた「サウイウモノ」は具体的な形と成していないところが秀逸だと思った。

正直この英訳が本当に賢治の詩と共鳴しているかというとすべて肯定はできないのだけれど、ただ宮沢賢治と「雨ニモ負ケズ」という詩に対する彼なりの解釈やアプローチは如実に感じられた。

昨年買った「ひとのあかし」はたくさんのフクシマの写真の合間に詩が書かれていて、正直読みづらいと少し読んでは放置していたのだが、もう一度手にとってみようと思った。

ひとのあかし
清流出版
若松 丈太郎

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基本的にアーサー・ビナードの活動は一貫していてブレがない。ただ311以降の日本でどう生きていこうとするのかがより自覚的になっている気がする。

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