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zoom RSS 高峰秀子と忘れられない日本映画たち―追悼・高峰秀子さん

<<   作成日時 : 2011/01/01 16:53   >>

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年末何かで華岡青洲に関するミステリーをやっていたときに、増村保造監督の『華岡青洲の妻』を思い出していた。有吉佐和子の原作にほぼ忠実に、それでいて格調高い文芸作品になっていたのは増村が手堅く撮ったこともさることながら、役者の魅力である。華岡青洲の妻・加恵を演じたのは若尾文子、華岡青洲を演じたのは市川雷蔵、そして青洲の母を演じたのは高峰秀子だった。青洲の父は相変わらず不気味でよくわからない伊藤雄之助だったが、華岡青洲が留学中に加恵は青洲の母に請われて息子の嫁にと声をかけられる。加恵は青洲のことを全く知らなかったのだが、高峰秀子演じる姑への憧れから華岡家に嫁になる。青洲が戻ってくるまで非常に仲の良い美しい嫁姑関係が続いたのだが、青洲が戻ってきてから姑は途端に加恵を相手にしなくなる、意地悪をするわけではないのだが、どうもよそよそしい、上っ面の苛めではない、しかし青洲をめぐるしたたかな駆け引きが始まったのである。この嫁姑は青洲の愛情が欲しいばかりに自らの身体を犠牲にして麻酔の実験台になるのだが、青洲はむしろ自分の実験のためにこの2人の自分をめぐる愛情争奪戦を利用していたズルい人間なのであり、渡辺美佐子演じる妹はそのことをなじるのだが、しかし青洲を演じるのが天下の市川雷蔵で、犠牲を捧げるのが若尾文子というスターならではの説得力はさすがに映画黄金期ならではである。そして結局加恵の方がキツい麻酔の実験台になり、副作用で目が見えなくなるのだが、このことにより嫁姑戦争は加恵の勝ちで、姑の負けになってしまうのもまた怖い話であった。

ただこの姑役が高峰秀子さんでなかったら、単なる醜悪な嫁姑戦争の話に陥っていたと思うのだが、加恵にとって姑というのは憧れの存在で、乗り越えるべきライバル、夫の功を支える戦友になっていくこの関係こそが「華岡青洲の妻」の根幹なのかもしれないと思ったのである。正直男なんてどうでも良い話であったのかもしれない。まして増村保造の映画なのだから。

そんなことをちょうどブログに書こうと思っていたのだが、なかなか書けずにいて、そして年を越してしまった2011年元旦の朝刊で高峰秀子さんの訃報を知った。

おそらくトーキー以後の日本映画において最高の女優だったのではないかと思う。木下恵介の『カルメン故郷に帰る』(主題歌は黛敏郎作曲だった気がする)の天真爛漫なストリッパーの明るさもすごく良かったし、代表作は『二十四の瞳』『喜びも悲しみも幾歳月』そして成瀬巳喜男監督作品の『浮雲』になるのだろう。この映画の投げやりな男女の惰性でズルズルと続いていく関係を見事に演じていて、相手役は日本映画最高の名優・森雅之だった(小悪魔的な岡田茉莉子も素敵だった)。高峰秀子はエッセイで森雅之はとにかく芝居が上手いと絶賛していたが、成瀬巳喜男作品でどこかアンニュイな男女の関係をこの2人でしばしば演じていた。成瀬作品では『女が階段を上る時』『流れる』『乱れる』などが忘れがたい。

こうやって高峰秀子さんのフィルモグラフィーをながめていたらまた成瀬巳喜男を見たくなってしまった。追悼上映があったら観に行こうかと思う。合掌。




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