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zoom RSS ドラマ「坂の上の雲」〜あるいは近代日本について〜

<<   作成日時 : 2009/11/30 00:24   >>

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司馬遼太郎の小説で一番好きなのは「坂の上の雲」だった。


坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)
文藝春秋
司馬 遼太郎

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私は大学で美術史を専攻していたが、特に重点を置いて調べていたのは西洋と東洋の価値観が衝突する混沌の中で生まれた近代美術である。

私たちが文化と考えているものは常に政治の変化とお金の流れと技術の発達の歴史の中で生まれたといっても過言ではない。政治経済の変化によって常に文化の新しいムーブメントが生まれた。私が近代史に目を向けたのも欧米が何百年かけて築いた近代社会をたった数十年で吸収しようとした近代日本の歪みは未だに日本に根強く残っているように思えて、自分たちはその脆弱な礎に立って生きている気がするからである。

私が美術史の中で研究したいと思っていた近代は関川夏央と谷口ジローの「坊っちゃんの時代」シリーズで遥かに高度な形で描かれていた。


坊ちゃんの時代―凛冽たり近代なお生彩あり明治人 (アクションコミックス)
双葉社
関川 夏央

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これは文人たちの近代史とでも呼ぶべきものだが、最初の2巻は明治時代の青春期を明るく描いているが、4巻の大逆事件以降はどうしてもトーンが下がらざるをえない。大逆事件というのは政府による言論の自由の弾圧に他ならないからだ。大逆事件に関連したドキュメンタリーの制作で死刑になった菅野須賀子の碑を撮りに行ったが甲州街道の初台あたりの寺にあり、道の向かい側にはリビングデザインセンターOZONEというオシャレなインテリアスペースがあって、まるで甲州街道が三途の川のように大逆事件の頃の時代と今の時代を隔てているような不思議な感じがした。

司馬遼太郎の近代を書いた本も色々読んだが、「坂の上の雲」は軍国史における近代日本の礎を築いた秋山兄弟と周辺の人間像を大きな視点で丹念に描き込んだ見事な作品である。特に前半の部分の秋山兄弟の青春期は「坊っちゃんの時代」の1、2巻を彷彿とさせる明るさが存在する。しかし近代日本は時代を経るごとに事は深刻になっていく。

「坂の上の雲」の映像化は非常に楽しみにしていた。脚本家の野沢尚さんの作品は割と好きだったから亡くなられたのは非常に残念だが、映像はあらゆるスタッフの気合いにみなぎっていたし、本木雅弘、香川照之、阿部寛といった役者が実に素晴らしいのであっという間に引き込まれた。脚本監修スタッフには関川夏央氏の名前も入っていた。

本木雅弘がイギリスの戦艦を見て驚くシーンはマンガ「へうげもの」で古田織部が信長が作らせた大安宅船を見に行くシーンを思い出した。


へうげもの―TEA FOR UNIVERSE,TEA FOR LIFE (1服) (モーニングKC (1487))
講談社
山田 芳裕

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みんなが興奮する中で織部は形の大小だけが物の価値ではないと言うにとどまったが、千利休は信長に異議を唱え、「少し物足りのうございます。全て黒くするのが良いでしょう」と進言する。これが利休と古田織部の密な関係の始まりであったことも興味深い。安土桃山時代も下剋上の時代で価値観が揺れていて、海外に新しいものを求めていたし、外国侵略を始めた時代でもあった。日本は安土桃山時代といい明治維新といい、一定のサイクルで下剋上の時代と異文化の大量吸収を繰り返しているのかもしれないと思った。そして本木雅弘演じる秋山の行く末がほんの少しだけ「へうげもの」の織部守と重なった。

ドラマ「坂の上の雲」は見応えがあって楽しかった。今後の展開が楽しみである。

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